ギリシア哲学への招待状 愛知哲仁 An Invitation to Greek Philosophy

第2講義 ピュタゴラス派

はい、こんにちは。今日はピュタゴラス。さっそくいきます。

教団結成

ギリシア地図、ピュタゴラス関係 ピュタゴラス(Pythagoras, B.C.570-500頃;497没とも)は、イオニア海岸の沖合いのサモス島で生まれました。活躍したのは、イタリアのクロトンというところ。土踏まずから先の方、土を踏むようになった所。彼はそこで、教祖様になります。

数学研究

「ピタゴラスの定理」。知ってますよね。三平方の定理というやつです。この他にも、「三角数」。1からnまでの和は、nと(n+1)をかけて2で割ると求められるというものです。数列のところで習うかな。それから「正多面体」。その他にもいろいろ。数学の研究をやる。彼の教団では、弟子が発見したものや研究したものでも、みんなピュタゴラスのものになってしまうのです。そして、それは教団の外部には一切秘密の掟があるのです。逆らうと危ないですよ。「私が考えました」と言ったり、秘密を漏らしたものには、死が待っているんです。なぜか海に消えるんです。

ハルモニア

それから、音楽の研究もやったんです。1オクターブ違うと、弦の長さが倍になるとか、ちゃんと調べているんです。ハモリの研究もやっています。和音を出してハモルことは、宇宙と調和することなんです。この調和をharmonia(ハルモニア)といいます。英語にすれば、何のことはない。harmony(ハーモニー)なんですが、ここでいうハルモニアは、宇宙の真理との調和なのであります。

ちょっと前になるのですが、中谷美紀主演のドラマ、なんて名前だったかなー。彼女がチェリストになって神がかりの演奏をするのです。彼女の先生役の伊武雅刀(いぶまさとう)が、確か「ハルモニアがどうとか」と発言していました。その娘役が矢田亜希子でした。確か。原作者か脚本家か知りませんが、「よく勉強してるな」と思いました。音楽監修者の入れ知恵かもしれませんが。多分音楽史か何かで、音大では教わると思います。

私は専門ではないので、出席したことはありませんが、ピュタゴラスに関する学会があると、哲学の他にも、数学者、こちらの方が多いと思いますが、彼らも来ます。そして、音楽関係の研究をしている人も、少し来るんじゃないかと思いますね。

とにかく、和音もきれいな整数比で表せることを突き止めたんです。ですから、数学と音楽はつながっています。うぅん? あー、それはだなー、例えば、弦の長さを倍にしたものは、元の弦より1オクターブ低くなるとか、弦の太さを2倍にしたら、やっぱり1オクターブ低い音が出るとか、そんなことだ。

何だね。君は、携帯のカメラで黒板を撮ってるのかね。信じられんね。ちゃんとノートに手書きするように。これからは、携帯カメラも、当然デジカメも禁止だ。やれやれ。君は、学籍番号は?、学生証は?。次回からは、ちゃんと記録するからね。今回は大目にみよう。

何だったかな。そう、そう。音楽。音楽と数学。このように、彼の教団は、数学と音楽を一生懸命やったんです。世界や宇宙の調和は数によって成り立っている。そういう風に考えたんです。数学と音楽を勉強することは、宇宙の調和に近づくことになり、人間も完成すると考えたようなのです。

二元論

一方で、人間の魂は来世で、別の人間や他の生き物に生まれ変わると考えたんです。【輪廻転生】ですね。彼らは「精神」と「身体」は、別のものと考える【二元論】なんです。ギリシア神話と他の宗教(当時流行していたオルフェウス教)の影響を受けて、こんなことを言うんです。霊魂(プシュケー:psychê)は、罪により霊魂の墓場(セーマ:sêma)である肉体(ソーマ:sôma)に宿らなければいけないのです。そして、罪が贖(あがな)われない限り、ヤドカリのように次から次へと肉体を替えていかなければいけないのです。数学と音楽の美しい調和の世界に触れ続けることによって、人間の魂は浄化されて、肉体から解放されるのです。

コスモス(kosmos)という言葉は、「秩序」「装飾」という意味なんですが。これを「宇宙」「世界」という意味で使い出したのも、ピュタゴラスらしいということです。

ピュタゴラス派は「世界は数でできている」という世界観に代表されます。すべてのものは、数によって認識でき、また、説明できると考えています。しかし、ミレトス派のように、万物の根源を「数」としたわけではないと思います。あくまで、世界を構成している統一原理として言ったんだと思います。その点で、ミレトス派とは違う。私はそう理解しています。

ピロラオス

今日の講義でも言ったように、教義をむやみやたらと外部の人間にもらしてはいけないという秘密主義の教団なので、直接ピュタゴラスの言葉に触れることはできませんが、紀元前470年ごろに生まれたピロラオスという人物の言葉だろう、とされる断片がいくつか残っています。

彼とアリストテレスの『形而上学』(第1巻第5章)などによると、一部のピュタゴラス派は、宇宙のあらゆるものを、【限定者】と【無限者】に分け、この両者の性質を併せ持つものがあるという。図に描くとこんな感じになります。女性の方は、「悪」と一緒にされて気分が悪いと思いますが、どちらが欠けても、目に見える存在は一つもできないのです。この両方の性質のものが調和的に組み合わさって、あらゆるものや宇宙ができているのです。

プラトンの思想に影響

ちょっと時間があるので、もう少しだけ。
後期の最初の方は、プラトンをやります。そうだね。〔イデア論〕が有名ですね。この〔イデア論〕は、ピュタゴラス教団やオルフェウス教団の教義内容にかなり影響を受けているんだ。

「魂は死なない」し「次々と肉体を替えて地上に舞い戻る」んだ。プラトンは、南イタリアにも何回か行っています。そのときに、当時のピュタゴラス学派の最重要人物のアルキュタスにも会っているようなのです。プラトンは、数学や音楽も一生懸命に教えます。色濃く影響を受けていることがわかりますね。

はい、終わります。


インデックス・ペイジ

初期ギリシア哲学

 第1講 ミレトス派

 第2講 ピュタゴラス派

 第3講 ヘラクレイトス

 第4講 エレア派

 第5講 エンペドクレス

 第6講 アナクサゴラス

 第7講 原子論

ソクラテス

 第8講 ソフィスト

 第9講 ソクラテスの生涯

 第10講 ソクラテスの弁明

 第11講 クリトン

 第12講 ソクラテスとは

プラトン

 第13講 プラトンの生涯

 
第14講以降は第13講のペイジ内やインデックス・ペイジ内のリンクよりご訪問ください。



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オルフェウス教
 ギリシア神話に、オルフェウス(オルペウス)という詩人・音楽家が現れる。リラという竪琴の名手で、彼がリラを奏(かな)で歌を歌うと、野獣ばかりでなく山や川、草や木も聞きほれたという。
 妻のエウリュディケが、毒蛇にかまれて死んでしまう。彼は冥界に妻を迎えにいく。そして、連れ帰る途中に妻を見てはならないという約束を破って、妻を見てしまう。このため、妻を連れ戻すことができなかった。
 いつまでも嘆き悲しむオルフェウスは、トラキアのマイナデスたち(酒神ディオニュソスを信じる女信者、踊り狂って山野を移動し、木を根っこから倒し、野獣さえも八つ裂きにして食べる。ディオニュソスは、バッコスとかバッカスと呼ばれることもある。また、マイナデスは複数形、これに「たち」をつけた表現は本当はおかしい。)に体を引き裂かれてしまう。
 後にオペラの題材として、この物語が取り上げられる。モンテヴェルディの『オルフェオ』、グルックの『オルフェオとエウリディーチェ』などがある。
 このオルフェウスを開祖と仰ぐ密儀宗教がオルフェウス教。紀元前6世紀に、ギリシア各地に広まった。
 魂はもともと、天上で神々とともにあったが、罪を犯して地上に落ちてしまった。そして、次々と肉体を変えて生まれ変わる輪廻転生の輪の中に放り込まれてしまった。音楽や戒律を守ることによって、魂が清められれば、輪廻から逃れ、天上に戻れるという教義。




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参考文献
『ソクラテス以前哲学者断片集第1分冊』  ¥4,830
内山勝利編 岩波書店
 貴重な資料を日本語にした記念碑的な書籍。
 第1講のイオニア派の他、この第2講のピュタゴラスも収録。
 実在が疑わしいオルフェウスの言葉も収録。




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参考文献
『形而上学(上)』
アリストテレス著 出隆訳
\798(税込み) 1983/11
岩波文庫
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